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バセドウ病や橋本病で髪が抜けるのはなぜ?治療法による違いと脱毛を防ぐためにできること

バセドウ病の治療中に、
「最近、髪の毛がよく抜ける」
「薬を飲み始めてから髪が薄くなった気がする」
「放射性ヨウ素治療や手術をすると脱毛しやすくなるのでは?」
と不安に感じる方は少なくありません。

髪の毛の変化は、見た目だけでなく気持ちにも大きく影響します。そのため、バセドウ病の治療を続けるうえで、脱毛が起こる理由や予防方法を知っておくことはとても大切です。

結論からいうと、バセドウ病に伴う脱毛は、治療法そのものが直接髪の毛を抜けさせるというよりも、甲状腺ホルモンの乱れや、治療後の甲状腺機能低下、自己免疫の影響によって起こることが多いと考えられています。

この記事では、バセドウ病と脱毛の関係、治療法による違い、脱毛を予防するためにできることを、患者さんにもわかりやすく解説します。

バセドウ病で髪が抜ける原因は?治療別の違いと脱毛の予防法
この記事でわかること
  • バセドウ病で髪が抜ける理由
  • 抗甲状腺薬、放射性ヨウ素治療、手術で脱毛リスクに違いがあるのか
  • 脱毛を防ぐために確認すべき甲状腺ホルモンのポイント
  • 円形脱毛症との違い
  • 受診した方がよい脱毛のサイン

バセドウ病とは?

バセドウ病は、甲状腺が過剰に働き、甲状腺ホルモンが多く作られすぎる病気です。甲状腺ホルモンは、体の代謝を調整する大切なホルモンです。

バセドウ病では、甲状腺ホルモンが過剰になることで、次のような症状が出ることがあります。

  • 動悸
  • 手のふるえ
  • 汗をかきやすい
  • 体重減少
  • 疲れやすい
  • イライラしやすい
  • 下痢気味になる
  • 月経不順
  • 髪が抜けやすい

髪の毛も体の一部であり、甲状腺ホルモンの影響を受けています。そのため、バセドウ病で甲状腺ホルモンが高い状態が続くと、髪の毛の成長サイクルが乱れ、抜け毛が増えることがあります。

なぜバセドウ病で髪が抜けるの?

髪の毛には「毛周期」と呼ばれるサイクルがあります。

髪が伸びる時期を成長期、成長が止まる時期を退行期、抜ける準備に入る時期を休止期といいます。

甲状腺ホルモンが多すぎたり少なすぎたりすると、この毛周期が乱れ、本来より多くの髪が休止期に入ってしまうことがあります。その結果、数週間から数か月遅れて、抜け毛が増えることがあります。

英国甲状腺財団は、重症または長期間続く甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症では、頭皮全体が均一に薄くなるような脱毛が起こることがあり、甲状腺の状態が改善しても髪の回復には数か月かかることがあると説明しています。

ここで大切なのは、治療を始めた直後に抜け毛が目立っても、必ずしも薬の副作用とは限らないという点です。

バセドウ病で甲状腺ホルモンが高かった時期の影響が、毛周期の遅れによって、治療開始後に目立ってくることがあります。

バセドウ病の治療法と脱毛への影響

バセドウ病の主な治療法には、以下の3つがあります。

  1. 抗甲状腺薬による薬物治療
  2. 放射性ヨウ素内用療法
  3. 手術療法

それぞれの治療法で、脱毛への影響は少しずつ異なります。

治療法 脱毛への直接的な影響 注意すべきポイント 脱毛予防の考え方
抗甲状腺薬 まれに薬剤性脱毛の報告あり 甲状腺ホルモンが下がりすぎていないか 定期採血でFT4・FT3・TSHを確認
放射性ヨウ素治療 放射線が直接髪を抜けさせるわけではない 治療後の甲状腺機能低下 早めの採血と必要時のホルモン補充
手術 手術そのものが直接脱毛を起こすことは少ない 手術後の甲状腺ホルモン不足、手術ストレス 術後のレボチロキシン調整
未治療・コントロール不良 脱毛リスクあり 甲状腺ホルモン高値が長引く 早めに治療して正常化を目指す

抗甲状腺薬で髪が抜けることはある?

バセドウ病の治療では、メチマゾールやプロピルチオウラシルといった抗甲状腺薬が使われます。

これらの薬で、まれに脱毛が副作用として疑われることはあります。ただし、実際には、薬そのものよりもバセドウ病による甲状腺ホルモン異常の影響が遅れて出ているケースも多いと考えられます。

たとえば、治療開始から1〜3か月ほどして抜け毛が増えた場合、患者さんとしては「薬を飲み始めたから抜けた」と感じやすいかもしれません。しかし、髪の毛はすぐに反応するわけではなく、数か月前の体調やホルモン状態の影響が後から出てくることがあります。

抗甲状腺薬治療中に脱毛が気になる場合は、まず次の点を確認することが大切です。

  • 甲状腺ホルモンがまだ高すぎないか
  • 逆に薬が効きすぎて甲状腺機能低下になっていないか
  • 貧血や鉄不足がないか
  • 急激な体重減少がないか
  • 円形脱毛症のように部分的に抜けていないか

自己判断で薬を中止すると、バセドウ病が悪化し、動悸や体重減少、甲状腺クリーゼなどのリスクにつながる可能性があります。抜け毛が気になる場合も、まずは主治医に相談しましょう。

放射性ヨウ素治療で髪は抜ける?

放射性ヨウ素内用療法と聞くと、「放射線で髪が抜けるのでは」と心配される方もいます。

しかし、バセドウ病で行う放射性ヨウ素治療は、主に甲状腺に取り込まれる性質を利用した治療です。一般的ながん治療で行われる外照射の放射線治療とは仕組みが異なります。

英国甲状腺財団も、放射性ヨウ素治療そのものが脱毛を起こすわけではないと説明しています。

ただし、放射性ヨウ素治療後には、甲状腺の働きが低下してくることがあります。ここが脱毛予防の大切なポイントです。

アメリカ甲状腺学会のガイドラインでは、バセドウ病に対する放射性ヨウ素治療後、甲状腺機能低下症は治療後4週以降に起こり得て、8週で約40%、16週で80%以上にみられるとされています。

つまり、放射性ヨウ素治療後の脱毛予防では、放射線そのものを心配するより、治療後に甲状腺機能低下を見逃さないことが重要です。

治療後は、FT4、FT3、TSHなどを定期的に確認し、必要に応じてレボチロキシンという甲状腺ホルモン薬を開始します。特に治療後早期は、TSHの反応が遅れることがあるため、TSHだけでなくFT4やFT3もあわせて確認することが大切です。

手術をすると脱毛しやすくなる?

バセドウ病では、甲状腺を手術で切除する治療が選ばれることもあります。

手術そのものが直接髪の毛を障害するわけではありません。しかし、手術後には以下のような理由で抜け毛が増えることがあります。

  • 手術という体へのストレス
  • 術後の一時的な体調変化
  • 甲状腺ホルモン補充量が不足することによる甲状腺機能低下
  • 食事量の低下や栄養不足

大きな病気や手術のあとには、数か月遅れて一時的に抜け毛が増えることがあります。これは「休止期脱毛」と呼ばれるタイプで、原因が落ち着けば時間とともに改善することが多いです。

手術後に大切なのは、甲状腺ホルモンを適切に補うことです。甲状腺を全摘した場合、体内で甲状腺ホルモンを十分に作れなくなるため、レボチロキシンの内服が必要になります。

術後に甲状腺ホルモンが不足した状態が続くと、疲れやすさ、むくみ、寒がり、体重増加、便秘などとともに、脱毛が目立つことがあります。したがって、術後も定期的な採血でTSHやFT4を確認し、薬の量を調整することが重要です。

円形脱毛症との違いにも注意

バセドウ病の患者さんでは、甲状腺ホルモンの乱れによる「全体的な抜け毛」だけでなく、円形脱毛症を合併することがあります。

円形脱毛症は、自己免疫の異常によって毛根が攻撃され、髪の毛が部分的に抜ける病気です。バセドウ病も自己免疫が関係する病気であるため、両者は合併することがあります。

日本人を含む研究では、バセドウ病患者97人のうち13人、つまり13.4%に円形脱毛症の既往があったと報告されています。

甲状腺ホルモンの乱れによる脱毛は、頭皮全体が均一に薄くなることが多い一方、円形脱毛症では一部が丸く抜ける、急に一か所だけ地肌が見える、眉毛や体毛も抜けるといった特徴があります。

脱毛のタイプ 特徴 考えられる原因
頭皮全体が薄くなる 髪全体のボリュームが減る 甲状腺ホルモンの乱れ、休止期脱毛
円形に抜ける 一部だけ地肌が見える 円形脱毛症
急激に大量に抜ける シャンプーやブラッシングで大量に抜ける 甲状腺機能異常、手術後、ストレス、栄養不足
髪が細くなる ハリやコシが減る ホルモン異常、栄養状態、加齢など

円形に抜けている場合や、急速に進行する場合は、甲状腺の治療だけでなく、皮膚科での評価も検討しましょう。

脱毛を予防するためにできること

バセドウ病に伴う脱毛を完全に防ぐことは難しい場合もあります。しかし、次のような点に気をつけることで、脱毛を悪化させにくくすることができます。

1. 甲状腺ホルモンを安定させる

最も大切なのは、甲状腺ホルモンを適切な範囲に保つことです。

甲状腺ホルモンが高すぎても、低すぎても、髪の毛には負担になります。治療中は、FT4、FT3、TSHを定期的に確認し、薬の量を調整します。

特に、放射性ヨウ素治療後や手術後は甲状腺機能低下になりやすいため、採血の間隔を空けすぎないことが大切です。

2. 自己判断で薬を中止しない

脱毛が気になると、「薬のせいかもしれない」と考えて、自己判断で薬をやめたくなることがあります。

しかし、抗甲状腺薬を急に中止すると、バセドウ病が悪化する可能性があります。動悸や息切れ、体重減少が悪化するだけでなく、重症化すると命に関わる甲状腺クリーゼにつながることもあります。

薬の副作用が心配な場合は、必ず主治医に相談してください。

3. 鉄・亜鉛・たんぱく質不足を確認する

髪の毛の成長には、たんぱく質、鉄、亜鉛、ビタミン類などが関係しています。

バセドウ病では代謝が高まり、体重が減ったり、食事量が不安定になったりすることがあります。女性では月経による鉄不足が重なることもあります。

脱毛が強い場合は、必要に応じて以下の検査を確認します。

  • 血算
  • フェリチン
  • 亜鉛
  • 肝機能・腎機能
  • アルブミン
  • 甲状腺機能
  • 必要に応じてビタミンDなど

4. 髪や頭皮への刺激を減らす

脱毛が気になる時期は、髪や頭皮への刺激を減らすことも大切です。

  • 強くこすって洗わない
  • きつく髪を結ばない
  • 過度なブリーチやパーマを控える
  • 睡眠不足を避ける
  • 急激なダイエットをしない

これらはバセドウ病そのものの治療ではありませんが、髪の毛への負担を減らす助けになります。

受診をおすすめする脱毛のサイン

次のような場合は、主治医または皮膚科に相談しましょう。

  • 抜け毛が急に増えた
  • 3か月以上抜け毛が続く
  • 円形に抜けている部分がある
  • 眉毛やまつ毛も抜ける
  • 頭皮に赤み、かゆみ、痛みがある
  • 疲れやすさ、むくみ、寒がり、体重増加がある
  • 動悸、手のふるえ、体重減少が再び出てきた

脱毛は甲状腺だけでなく、貧血、栄養不足、皮膚疾患、ストレス、薬剤、加齢など、さまざまな原因で起こります。原因を一つに決めつけず、必要な検査を行うことが大切です。

まとめ

バセドウ病では、甲状腺ホルモンの乱れによって髪が抜けやすくなることがあります。

抗甲状腺薬、放射性ヨウ素治療、手術のいずれも、治療そのものが直接脱毛を起こすというより、甲状腺ホルモンが高すぎる状態や、治療後に低くなりすぎる状態が脱毛に関係すると考えられます。

特に放射性ヨウ素治療後や手術後は、甲状腺機能低下を早めに見つけ、必要に応じて甲状腺ホルモン薬を調整することが重要です。

また、バセドウ病は自己免疫が関係する病気であり、円形脱毛症を合併することもあります。頭皮全体が薄くなるのか、一部が円形に抜けるのかによって、考える原因や対応が変わります。

抜け毛が気になる場合も、自己判断で薬を中止せず、主治医に相談してください。甲状腺機能、栄養状態、皮膚の状態を確認しながら、原因に合わせて対応していくことが大切です。

監修者

監修:にしな内科 院長 仁科
日本内科学会/日本糖尿病学会/日本内分泌学会関連の診療経験をもとに、甲状腺疾患・糖尿病・生活習慣病を中心に診療を行っています。
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針は診察や検査結果により異なります。症状がある方は医療機関へご相談ください。

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よくある質問

Q. バセドウ病で髪が抜けることはありますか?
A. あります。甲状腺ホルモンが高い状態が続くと、髪の成長サイクルが乱れ、頭皮全体の抜け毛が増えることがあります。

Q. バセドウ病の薬で脱毛しますか?
A. 抗甲状腺薬で脱毛が疑われることはまれにありますが、多くは病気そのものや甲状腺ホルモンの変動が関係している可能性があります。自己判断で薬を中止せず、主治医に相談してください。

Q. 放射性ヨウ素治療で髪は抜けますか?
A. 放射性ヨウ素治療そのものが直接脱毛を起こすわけではありません。ただし、治療後に甲状腺機能低下が起こると脱毛の原因になることがあります。

Q. 手術後に抜け毛が増えることはありますか?
A. 手術による体へのストレスや、術後の甲状腺ホルモン不足によって一時的に抜け毛が増えることがあります。術後のホルモン補充と採血確認が重要です。

Q. 円形に髪が抜ける場合もバセドウ病が原因ですか?
A. 円形に抜ける場合は、円形脱毛症の可能性があります。バセドウ病と円形脱毛症はいずれも自己免疫が関係することがあり、合併することがあります。皮膚科での評価も検討しましょう。

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