マンジャロの無許可販売報道を受けて― 安全な肥満治療・糖尿病治療のために、当院の考えをお伝えします ―

マンジャロをめぐる違法販売の問題点と、当院の肥満治療に対する考え方
このたび、糖尿病治療薬である「マンジャロ」を、SNS等を通じて許可なく販売・保管していた疑いで摘発されたとの報道がありました。報道によれば、医薬品販売業の許可を受けていない者が、処方薬であるマンジャロを第三者に販売・譲渡していた疑いが持たれています。
医薬品は、誰でも自由に売買できる商品ではありません。薬機法上、医薬品を業として販売・授与したり、販売目的で保管したりするには、原則として許可が必要です。今回のような事案は、単なる「転売」ではなく、患者さんの健康を危険にさらす重大な社会問題だと考えています。
マンジャロ・GLP-1/GIP製剤による治療を検討している方へ
この記事は、マンジャロによる糖尿病治療を受けている方、肥満治療やメディカルダイエットに関心がある方、SNSや個人間売買で医薬品を見かけて不安を感じている方に向けた内容です。
マンジャロは、正しく使えば非常に有用な薬です。一方で、診察を受けずに入手したり、他人に処方された薬を使用したりすることは、医学的にも法的にも大きな問題があります。
マンジャロは「危ない薬」ではなく、「正しく使うべき有効な薬」です
マンジャロは、現在の糖尿病診療において非常に重要な薬剤です。血糖値を改善するだけでなく、食欲や体重にも作用し、2型糖尿病の患者さんの治療戦略を大きく変えた薬の一つです。当院の診療現場でも、これまで血糖コントロールや体重管理に悩んでいた方が、マンジャロの使用によって前向きに治療を継続できるようになった例を数多く経験しています。
これは決して「危ない薬」という意味ではありません。正しく使えば、多くの方の健康を支える力を持った、まさにゲームチェンジャーとも言える薬です。
マンジャロの無許可販売がなぜ問題なのか
薬の転売は、単なる個人売買ではありません
しかし、効果が高い薬であるからこそ、使い方を誤ると危険です。マンジャロには、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、食欲低下などの副作用があり、まれではありますが、低血糖、急性膵炎、胆のう炎、胆管炎、アナフィラキシー、イレウスなどの重大な副作用も報告されています。
特に、自己判断で用量を増やす、他人に処方された薬を使う、診察を受けずにSNSやフリマ経由で入手する、といった行為は非常に危険です。薬の保管状態が適切であったか、本物であるか、使用してよい体の状態か、副作用が出たときに誰が責任を持って対応するのか――これらが全く保証されないからです。
保険診療のルールと、不正利用への強い憤り
本当に必要な患者さんの治療機会を奪う行為です
また、現行の保険診療では、マンジャロは2型糖尿病の治療薬として承認されている薬です。糖尿病の診断がない方に、単に「やせたい」という目的だけで保険診療として処方することはできません。
保険診療は、患者さん全体の医療を支える大切な制度であり、医師・医療機関・患者さんの信頼の上に成り立っています。その制度を悪用し、薬を不正に入手して転売するような行為は、薬を本当に必要としている糖尿病患者さんの治療機会を奪う可能性があります。
当院として、このような行為には強い憤りを感じます。
肥満は「見た目の問題」だけではなく、医学的に向き合うべき「健康問題」です
健康寿命を延ばすための肥満治療
一方で、肥満そのものもまた、医学的に軽視してよい問題ではありません。肥満は、糖尿病、高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群、脂肪肝、心筋梗塞、脳卒中、慢性腎臓病など、多くの病気と深く関係しています。
体重を適切に管理することは、見た目の問題ではなく、健康寿命を延ばすための重要な医療です。そのため当院では、肥満治療を「美容目的のダイエット」としてではなく、将来の病気を防ぐための医療として位置づけています。
当院における肥満治療の方針
適応外使用であっても、医学的な必要性を見極めて処方します
当院で肥満治療に薬物療法を用いる場合には、まず身長・体重・BMI、血液検査、血糖、脂質、肝機能、腎機能、血圧、内服薬、既往歴などを確認し、本当に薬物治療が必要かを慎重に判断します。
適応外使用となる場合であっても、医学的な必要性、リスク、期待できる効果、費用、副作用時の対応について十分に説明した上で、患者さんと相談しながら進めます。
単に「すぐやせる薬」として処方するのではなく、食事、運動、生活習慣、筋肉量の維持、治療終了後のリバウンド対策まで含めて考えることが重要です。
副作用が出たときに対応できる体制
薬を渡して終わりではなく、治療中の安全確認まで行います
また、当院は内科・糖尿病内分泌の診療を行う医療機関として、副作用が出た際に自院で初期対応できる体制を整えています。
強い吐き気や腹痛、脱水、低血糖が疑われる症状、膵炎や胆のう炎が疑われる症状があれば、診察、血液検査、必要に応じた画像検査や専門医療機関への紹介を行います。
薬を渡して終わりではなく、治療中の安全確認まで責任を持つことが、医療機関として当然の姿勢だと考えています。
自由診療における価格設定について
法外な利益ではなく、適正価格での提供を大切にします
費用についても、当院では法外な利益を目的とした価格設定は行いません。自由診療で行う場合であっても、薬剤費、診察、検査、説明、フォロー体制を含め、患者さんが納得できる適正な価格で提供することを大切にしています。
安さだけを前面に出して安全管理を省くことも、高額な料金で不安をあおることも、当院の方針とは異なります。
今後の保険診療での肥満症治療について
保険診療で処方可能な施設となれるよう、体制整備を進めています
現在、肥満症に対しては、保険診療で使用できる薬剤も登場してきています。ただし、保険診療での肥満症治療薬の処方には、対象となる患者さんの基準、施設要件、治療前の生活習慣改善の実施、栄養指導体制、副作用対応体制など、厳格なルールがあります。
当院でも今後、保険診療で肥満症治療薬を適切に処方できる施設となれるよう、体制整備を進めています。
患者さんへお伝えしたいこと
SNSや個人間売買で薬を入手しないでください
最後に、患者さんにお伝えしたいことがあります。
マンジャロを含むGLP-1/GIP関連薬は、決して「悪い薬」ではありません。むしろ、正しく使えば糖尿病治療や肥満に伴う健康リスクの改善に大きく貢献する薬です。
しかし、SNSや個人間売買で入手して使う薬ではありません。体に入れる薬は、価格や手軽さだけで選ぶものではなく、安全性、適応、フォロー体制まで含めて選ぶべきものです。
当院の声明
薬を必要な方に、安全に届ける医療を続けます
当院は、薬の価値を正しく伝え、必要な方に安全に届ける医療を続けていきます。
そして、薬を本当に必要としている患者さんが、不正流通や制度の悪用によって不利益を受けることがないよう、医療機関として責任ある情報発信を行ってまいります。
執筆者・監修者情報
執筆・監修
- にしな内科
- 院長 仁科 周平
- 糖尿病・内分泌疾患を中心に、生活習慣病、肥満症、甲状腺疾患、骨粗しょう症、一般内科診療を行っています。
- 日々の診療では、血糖値や体重だけを見るのではなく、患者さん一人ひとりの生活背景、将来の合併症リスク、健康寿命を考えた治療を大切にしています。
医院情報
- にしな内科
- 診療科目
- 内科、糖尿病内科、内分泌内科、消化器内科、内視鏡内科、肥満治療、生活習慣病診療 など
当院の特徴
- にしな内科では、糖尿病・内分泌診療を専門とする院長と、消化器・内視鏡診療を専門とする副院長が連携し、幅広い内科診療を行っています。
- 糖尿病、肥満、高血圧、脂質異常症、甲状腺疾患、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群など、将来の健康に関わる疾患について、検査・治療・生活指導を含めて総合的にサポートします。
肥満治療について
- 当院では、肥満治療を単なる美容目的のダイエットではなく、糖尿病・高血圧・脂質異常症・脂肪肝・睡眠時無呼吸症候群などを予防し、健康寿命を延ばすための医療として考えています。
- 薬物療法を行う場合も、適応、リスク、副作用、費用、治療終了後の体重管理まで含めて、医師が丁寧に確認しながら進めます。
参考情報
- 今回のコラムは、マンジャロの無許可販売・譲渡に関する報道、および医薬品の適正使用に関する情報をもとに、当院の診療方針を含めて作成しています。マンジャロを含む薬剤の使用については、必ず医師の診察を受け、自己判断や個人間売買による使用は避けてください。
当院公式ホームページ ~肥満治療について~
院長:仁科 周平 医師紹介
