甲状腺の検査「TSH」が高いのは病気? 高齢者・妊娠中などで違う考え方をわかりやすく解説
- TSHが高いと言われても、すぐ治療が必要とは限らない理由
- 潜在性甲状腺機能低下症とは何か
- 高齢者では治療しすぎに注意が必要なこと
- 妊娠希望・妊娠中の甲状腺機能の考え方
- どんなときに受診すべきか
こんな方におすすめです
- 健診や採血でTSHが高いと言われた
- 甲状腺機能低下症の疑いを指摘された
- 橋本病や甲状腺の異常が気になっている
- 妊娠を考えていてTSH 2.5以上と言われ不安になった
- 妊娠中に甲状腺の数値を指摘された
結論
TSHが少し高いだけでは、すぐに治療が必要とは限りません。
特に高齢の方では、年齢によってTSHがやや高めになることがあり、過剰な診断や治療に注意が必要です。
一方で、妊娠希望の方や妊娠中の方、あるいは症状や他の病気を伴う方では、治療を考えたほうがよい場合があります。
大切なのは、TSHだけで判断せず、FT4や症状、年齢、妊娠の有無をあわせて見ることです。

潜在性甲状腺機能低下症とは?
TSHが高いのに、甲状腺ホルモンは正常な状態です
潜在性甲状腺機能低下症とは、TSHが高い一方でFT4は正常範囲内にある状態を指します。
甲状腺ホルモンが明らかに足りない「甲状腺機能低下症」とは少し違い、まだはっきりした機能低下とは言えない段階です。
採血結果だけで、すぐに薬が必要と決まるわけではありません。
自覚症状がないことも少なくありません
だるさ、むくみ、体重増加、寒がり、便秘、気分の落ち込みなどがみられることもありますが、まったく症状がない方も多いのが特徴です。
健診や人間ドックでたまたま見つかることもよくあります。
TSHが高いと言われても、すぐ異常とは限らない理由
TSHは年齢や性別で変わります
TSHは年齢や性別の影響を受ける数値で、特に女性や高齢者ではやや高めに出ることがあります。
一律の基準値だけで判断すると、本当は問題のない方まで「異常」とされてしまうことがあります。
高齢者では“年齢相応の変化”のことがあります
高齢の方では、TSHが少し高くても加齢に伴う自然な変化の可能性があります。
高齢者のTSH高値は、必ずしも病気を意味するわけではありません。
高齢者の潜在性甲状腺機能低下症は治療したほうがいい?
治療しないで様子を見ることも多いです
治療は一般的にレボチロキシンという甲状腺ホルモン薬を少量から使用します。
ただし高齢者では、TSHが少し高いだけなら、すぐ治療しないという判断になることが少なくありません。
治療しすぎると、かえって不利益になることもあります
必要以上に薬を使うと、動悸、不整脈、骨が弱くなること、転倒や骨折のリスク上昇などにつながる可能性があります。
高齢者では「少し高いTSHを無理に下げる」ことが、かえってマイナスになる場合もあります。
こんな場合は治療を考えることがあります
比較的若い方、症状がはっきりある方、LDLコレステロールが高い方、動脈硬化や心不全が気になる方、TSH高値が続く方、橋本病が背景にあると考えられる方では治療を検討することがあります。

妊娠希望の方・妊娠中の方は甲状腺の数値に注意
妊娠初期はお母さんの甲状腺ホルモンが大切です
甲状腺ホルモンは赤ちゃんの成長や脳の発達に関わる大切なホルモンです。
特に妊娠初期は、お母さん側の甲状腺機能が重要になります。
TSH 2.5以上なら全員治療、とは限らなくなってきています
以前は妊娠前や妊娠初期にTSHが2.5以上なら治療を考えることが多くありましたが、最近は2.5を超えただけで一律に治療するのではなく、もう少し個別に判断する方向に見直されつつあります。
妊娠前・妊娠中に治療を考えるのはどんなとき?
潜在性甲状腺機能低下症では治療を検討することがあります
妊娠を考えている方や妊娠初期の方で、潜在性甲状腺機能低下症がある場合は治療を検討することがあります。
特に流産や流死産を繰り返したことがある方、早産リスクが気になる方、甲状腺の病気の既往がある方ではより丁寧な評価が必要です。
正常高値TSHだけでは治療しない場合もあります
TSH 2.5以上でも基準値上限を超えていない「正常高値TSH」の方では、全員に治療が必要とは限りません。
最近の考え方では、治療対象は限られたケースに絞られる可能性があります。
妊娠中の甲状腺治療は“やりすぎ”にも注意
薬が多すぎると問題になることがあります
甲状腺ホルモン薬は適切に使えば大切な治療ですが、多すぎればよいわけではありません。
必要以上に投与してTSHを下げすぎると、早産リスクの上昇などが心配される可能性があります。
妊娠中は定期的な採血で調整します
妊娠中に治療する場合は、定期的に採血を行いながら、薬の量を細かく調整することが大切です。

TSHが高いとき、実際にどうすればいい?
まずは1回の採血だけで決めつけないことが大切です
TSHは体調やタイミングで多少変動することがあります。
1回高かっただけで決めつけず、FT4の確認、必要に応じた再検査、橋本病関連の抗体検査、症状や年齢をあわせた判断が重要です。
こんな方は受診をおすすめします
- 健診でTSH高値を繰り返し指摘される方
- だるさ・むくみ・便秘・寒がりなどの症状がある方
- コレステロール高値がある方
- 妊娠希望・不妊治療中・妊娠中の方
- 甲状腺疾患の家族歴がある方
- すでに薬を飲んでいて量が合っているか不安な方
は受診をおすすめします。
にしな内科からひとこと
TSHが高い=すぐ治療、ではありません
外来でも「TSHが高いと言われたけれど、すぐ薬が必要ですか?」というご相談はよくあります。
実際には、年齢、症状、FT4、妊娠の有無、コレステロールや心血管リスクなどによって対応は大きく変わります。
特に高齢の方では、治療のメリットよりも治療しすぎのデメリットに注意したい場面があります。
不安な方は採血結果をご持参ください
甲状腺の数値は言葉が難しく不安になりやすい分野ですが、数値だけで慌てる必要がないケースも多くあります。
当院でも採血結果を確認しながら、いま治療が必要か、経過観察でよいか、追加検査が必要かをわかりやすくご説明しています。
まとめ・私見
TSHという検査項目は0.5~5.0と基準値が10倍近い広いレンジの項目です。
つまり、「個人差が大きい」=「健康体であっても基準値を下回ったり上回ったりし易い」わけです。
潜在性甲状腺機能低下症は、TSHが高くFT4が正常な状態です。
この場合であっても、決して全員が治療の対象になるわけではありません。
むしろ薬による治療対象になる方のほうが少ないです。
特に高齢者では、TSHがやや高めでも年齢による変化のことがあり、過剰診断・過剰治療に注意が必要です。
一方で、妊娠希望の方や妊娠中の方、症状がある方、コレステロール高値や動脈硬化リスクがある方では治療を考えることがあります。
大切なのは、「TSHが高い」という結果だけで判断せず、その人に合った見方をすることです。
そのためには甲状腺以外のデータ、過去からの体調変化、年齢等に注目をして一人ひとりにあった治療計画を考えることが重要です。
ご参考になりましたら幸いです。長くなりましたが最後までご精読頂き有難うございました。
監修者表
監修:仁科 周平(にしな内科 院長)
日本糖尿病学会 糖尿病専門医
日本糖尿病学会 研修指導医
日本糖尿病協会 療養指導医
日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医 日本内科学会 総合内科専門医
にしな内科
JR神戸線立花駅を下車、駅直結の徒歩1分、雨にぬれずに来院できます。
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院長:仁科 周平 医師紹介
