メトホルミン服用中は夏の脱水に注意!熱中症・下痢時の休薬目安
メトホルミン服用中は夏の脱水に注意~熱中症・下痢・発熱時の休薬とシックデイルール~

暑い日が続くと、汗を多くかいたり、食欲が落ちたりして、知らないうちに脱水状態になることがあります。
糖尿病治療薬のメトホルミンは、効果が高く、低血糖を起こしにくい優れた薬です。ただし、脱水した状態で服用を続けると、腎機能が急に低下して薬が体内にたまり、まれではありますが「乳酸アシドーシス」という重い副作用につながる可能性があります。
この記事で分かること
- メトホルミン服用中に脱水へ注意すべき理由
- 暑いだけでメトホルミンを中止する必要があるのか
- 一時的な休薬を検討する症状
- すぐに受診したほうがよい危険なサイン
- 糖尿病の方に適した夏の水分補給
結論:暑いだけなら中止不要、脱水したら一時休薬を検討
| 結論 普段どおり食事と水分がとれているなら原則として処方どおり服用します。 脱水が疑われる体調不良時は、一時休薬と医療機関への相談を検討します。 |
メトホルミンを服用している方が、暑いという理由だけで薬を中止する必要はありません。
普段どおり食事と水分がとれており、尿も出ていて体調に問題がなければ、基本的には処方どおり服用します。
一方、次のような「脱水が疑われる状態」では、メトホルミンを一時的に休薬し、かかりつけ医へ相談することが推奨されます。
- 嘔吐や下痢が続いている
- 発熱があり、汗を多くかいている
- 水分が十分に飲めない
- 食事量が普段の半分以下になっている
- 尿の量や回数が明らかに減った
- 口の中が強く乾く
- 立ちくらみ、強いだるさ、ふらつきがある
- 熱中症が疑われる
このような体調不良時の薬の扱いを「シックデイルール」と呼びます。
メトホルミンはどのような糖尿病治療薬?
メトホルミンは、主に肝臓から糖が作られるのを抑え、インスリンを効きやすくする薬です。商品名として「メトグルコ」「グリコラン」などがあり、メトホルミンを含む配合剤もあります。
単独では低血糖を起こしにくく、体重増加も比較的少ないことから、2型糖尿病の治療に広く使用されています。
メトホルミンそのものが、通常の状態で脱水を起こす薬というわけではありません。問題となるのは、熱中症、発熱、嘔吐、下痢などによって、すでに脱水している状態で服用を続けることです。
なぜ脱水中にメトホルミンを飲むと危険なの?
メトホルミンは、主に腎臓から尿中へ排泄されます。
脱水によって体内の水分が不足すると、腎臓へ流れる血液が減り、一時的に腎機能が悪化することがあります。するとメトホルミンが十分に排泄されず、体内にたまりやすくなります。
さらに、重い脱水や熱中症では全身の血液循環も悪くなり、乳酸が増えやすい状態になります。こうした条件が重なることで、「乳酸アシドーシス」の危険性が高まります。
日本糖尿病学会の診療ガイドラインでも、メトホルミン関連乳酸アシドーシスの症例では、急性の腎機能悪化や脱水を伴っていたケースが多いと報告されています。
乳酸アシドーシスとは?
乳酸アシドーシスとは、血液中に乳酸が過剰にたまり、血液が酸性に傾く状態です。発生頻度は非常に低いものの、一度発症すると重症化する可能性があります。
初期には次のような症状がみられます。
- 吐き気、嘔吐、腹痛、下痢
- 普段とは違う強いだるさ
- 筋肉痛、脱力感
- 息苦しさ
- 呼吸が速い、深い
- 意識がぼんやりする
| 注意 暑さによる疲労や胃腸炎と区別しにくいことがあります。 「いつもの夏バテとは違う」と感じた場合は、我慢せず医療機関へ相談してください。 |
メトホルミンの添付文書でも、脱水症状が現れた場合には投与を中止し、適切な処置を行うよう注意喚起されています。
夏にメトホルミンを休薬する目安
暑いだけで一律に中止する必要はありません
エアコンの効いた環境で過ごし、水分や食事が普段どおりとれている場合は、通常、メトホルミンを中止する必要はありません。
「夏の間はずっと休薬する」「気温が高ければ毎回中止する」といった対応では、血糖値が悪化する可能性があります。
脱水が疑われる場合は一時休薬を検討します
発熱、嘔吐、下痢、熱中症などで脱水となり、体調が悪い場合は、一般的にメトホルミンなどのビグアナイド薬は原則として一時中止します。
ただし、糖尿病の薬は種類によって対応が異なります。特にインスリンは、食事がとれない場合でも自己判断で完全に中止すると危険なことがあります。メトホルミンだけでなく、ほかの薬を一緒に使用している方は、かかりつけ医へ確認してください。
国立健康危機管理研究機構の糖尿病情報センターも、発熱や下痢、食事ができないなど、脱水を伴う体調不良時にはビグアナイド薬を原則中止すると案内しています。
メトホルミンはいつ再開する?
水分と食事が普段どおりとれるようになり、嘔吐や下痢、発熱、尿量減少などが改善してから再開を検討します。
ただし、次に該当する方は腎機能が悪化している可能性があるため、自己判断ですぐに再開せず、医療機関へ相談してください。
- 脱水症状が強かった
- ほとんど飲食できない状態が続いた
- 尿量が大きく減った
- 高齢である
- もともと腎機能が低下している
- 救急受診や点滴治療を受けた
診察や血液検査で腎機能を確認してから再開したほうが安全な場合があります。
糖尿病の方が夏に行いたい水分補給
普段は水やお茶をこまめに
日常的な脱水予防には、水や無糖のお茶を少量ずつ、こまめに飲みましょう。喉の渇きを感じにくい高齢者は、時間を決めて飲む方法も有効です。
スポーツドリンクには糖質が多く含まれるものがあり、日常的に大量に飲むと血糖値が上昇する可能性があります。
大量の発汗や下痢・嘔吐では経口補水液も選択肢
大量に汗をかいた場合や、下痢・嘔吐によって水分と塩分を失った場合には、経口補水液が適することがあります。ただし、経口補水液にも糖分と塩分が含まれています。
心不全、腎臓病、高血圧などで水分量や塩分量を制限されている方は、一般的な目安をそのまま当てはめず、主治医の指示に従ってください。
特に脱水へ注意してほしい方
次に該当する方は、夏場の脱水とメトホルミンの服用に、より注意が必要です。
- 75歳以上の高齢者
- 腎機能が低下している方
- 心臓、肺、肝臓の病気がある方
- 利尿薬を服用している方
- SGLT2阻害薬を併用している方
- 下痢や嘔吐が起こりやすい方
- 食事量や水分摂取量が少ない方
- 飲酒量が多い方
- 屋外や高温の場所で仕事・運動をする方
SGLT2阻害薬には尿量を増やす作用があるため、メトホルミンとの併用中は特に脱水へ注意します。
すぐに医療機関へ相談・受診する症状
次の場合は、自宅で様子を見続けず、早めに医療機関へ連絡してください。
- 水分を飲んでも吐いてしまう
- 嘔吐や下痢が止まらない
- 食事や水分がほとんどとれない
- 尿がほとんど出ない
- ぐったりして動けない
- 息苦しい、呼吸が速い
- 意識がぼんやりする、受け答えがおかしい
- 高い血糖値が続いている
- 強い発熱が続いている
| 緊急時 意識障害や呼吸困難がある場合は、ためらわず救急要請を検討してください。 |
にしな内科からのメッセージ
当院でも夏になると、「食欲がないけれど糖尿病の薬を飲んでよいですか」「下痢をしている場合はどうすればよいですか」というご相談が増えます。
メトホルミンは、正しく使用すれば非常に有用な糖尿病治療薬です。必要以上に怖がる必要はありませんが、脱水や体調不良時には普段と同じ飲み方を続けないほうがよい場合があります。
体調を崩してから慌てないよう、元気なときに「どの症状があれば薬を休むのか」「いつ医療機関へ連絡するのか」を確認しておきましょう。
執筆・監修:にしな内科 院長/糖尿病専門医
当院公式ホームページ 「糖尿病」
院長:仁科 周平 医師紹介
