世界初、週1回持効型インスリン製剤アウィクリのご紹介
尼崎市立花駅前の「にしな内科」で糖尿病内科や甲状腺疾患を担当している院長の仁科です。
インスリン治療は、糖尿病の合併症を防ぐためにとても強力な治療選択肢ですが、「毎日注射しないといけない」「旅行や仕事の日に忘れそう」といった負担が障壁になることもしばしばあります。そのような中、世界で初めて週1回の投与で基礎インスリンを補う製剤として登場したのが、アウィクリ®(一般名:インスリン イコデク Insulin Icodec)です。日本では「インスリン療法が適応となる糖尿病」を適応として今年の1月発売され、今月より処方制限が解禁されました。

これまでの持効型(基礎)インスリンの開発の歴史
体のインスリン分泌には「食事に反応して分泌されるインスリン(追加分泌)」と「一日中少しずつ分泌されるインスリン(基礎分泌)」の2種類があります。基礎分泌を補うためのインスリンは、長い間、NPHなど“効き方に山(ピーク)が出やすい”製剤が中心でした。
その後、よりピークが少なく、長く安定して効く持効型インスリンアナログ(例:ランタス®、レべミル®)が登場し、さらにその作用時間を延ばした超持効型(例:トレシーバ®)へと進化してきました。これらの流れの延長線上に、「1週間にわたって安定して効く」ことを目指して設計された週1回製剤がアウィクリ®です。皮下投与後、アルブミンに可逆的に結合し、ゆっくり解離することで作用が長く続くとされています(半減期は約1週間)。
過去の製剤との比較研究(ONWARDS試験など)
アウィクリ®は、世界規模の第3相試験プログラム「ONWARDS試験」で、従来の1日1回の基礎インスリン(グラルギンU100やデグルデクなど)と比較されています。主な結果として、HbA1c(過去1〜2か月の平均血糖の目安)の改善は“同等〜一部で優越”と報告され、週1回でも十分な血糖コントロールが可能であることが示されました。
N Engl J Med 2023 Jul 27;389(4):297-308.
また、日本人を含む解析でも、1日1回の基礎インスリンと同程度の血糖改善を示しつつ、臨床的に問題となる低血糖(重症・臨床的に意義のある低血糖)は低い水準で維持されたという報告があります。
Diabetes Obes Metab. 2024 Dec;26(12):5882-5895.
さらに、週1回という投与回数の少なさは、治療満足度の改善(「負担が減った」「続けやすい」など)につながり得ることも示されています。

どんな患者さんに有効?(向いている方・注意が必要な方)
向いている可能性があるのは、たとえば次のような方です。
- 基礎インスリンが必要だが、毎日の注射が心理的・生活的に負担になっている方
- 忙しくて投与忘れが心配な方(“毎日”より“週1回の固定日”のほうが習慣化しやすい場合があります)
- すでに基礎インスリンで治療しており、用量が比較的安定している方
なお、1型糖尿病の方では、基礎インスリンに加えて食事のたびの追加インスリン(速効型/超速効型)を組み合わせて治療する必要があります。
また、アウィクリ®は用法・用量の記載上「成人」を対象とした製剤です。
一方、週1回製剤は“効き目が1週間続くため、切り替え初期や用量調整の時期には、血糖の自己測定(SMBG)や持続血糖モニタリング(CGM)を含めた丁寧なモニタリングがとても大切です。添付文書でも、投与開始時〜血糖が安定するまで十分な血糖モニタリングを行うこと、投与曜日を固定すること、やむを得ず変更する場合は投与間隔を4日以上あけること等が示されています。また、臨床試験では注射後2〜4日頃に低血糖が多くみられた、という注意点も共有されています。
患者さんにとってのメリット(期待できること)
- 注射回数が大幅に減る
基礎インスリンが「毎日」から「週1回」になることで、年間の注射回数は大きく減ります。生活に組み込みやすくなり、治療の“続けやすさ”が上がる可能性があります。
- 心理的負担の軽減、QOL(生活の質)の向上
「注射の回数」そのものがストレスになっている方では、負担軽減が治療満足度の改善につながり得ます。
- 高用量の方でも使いやすい規格の登場
インスリン投与量が多い方に向けて、総量700単位のペン型製剤が追加され、在庫本数や廃棄本数の削減にもつながるとされています。環境保護の視点でもエコです。
さいごに
アウィクリ®は、週1回で基礎インスリンを補うというこれまでにない画期的なインスリン治療です。注射の負担が減り、治療を継続しやすくなることが期待されます。一方で、切り替え時の用量調整や低血糖の注意点など、週1回ならではのコツもあります。気になる方は、現在の治療状況(HbA1c、低血糖の有無、生活リズム、併用薬など)を踏まえて、主治医と一緒に「自分に向くかどうか」を相談していきましょう。
にしな内科 院長
仁科周平
にしな内科
JR神戸線立花駅を下車、駅直結の徒歩1分、雨にぬれずに来院できます。アクセス良好につき、神戸市、西宮市、芦屋市、伊丹市、大阪市など各方面からも多くの患者様にご来院頂いております。
院長:仁科 周平 医師紹介
