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甲状腺機能低下症や橋本病ってどんな病気?

尼崎市立花駅前の「にしな内科」で糖尿病内科や甲状腺疾患を担当している院長の仁科です。久しぶりに甲状腺機能低下症に関する大きなまとめ論文(システマティックレビュー)がJAMAという有名が医学雑誌から発表されました。

その論文を受けて、このブログでは甲状腺機能低下症・橋本病に関してご紹介させていただきます。(Hypothyroidism: A Review. JAMA. Published online September 3, 2025. doi:10.1001/jama.2025.13559

概要

甲状腺機能低下症とは、体の中で重要な役割を持つ甲状腺ホルモンが十分に作られず、体のあらゆる代謝(エネルギーをつくる・使う)がゆっくりになる状態を指します。正常な甲状腺ホルモンの量が低くなると、体の働きが「スローダウン」した代謝が落ちた状態になります。

レビュー論文では、世界の発症率が約0.3%〜12%とかなり幅があること、女性や高齢者に多いことが示されています。

原因としては、ヨウ素不足の地域ではその影響もありますが、一方でヨウ素が十分な地域では、自己免疫性の病気である橋本病(=甲状腺を標的とした免疫反応)が原因となる「原発性甲状腺機能低下症」が、全体の約85%を占めると報告されています。

症状

甲状腺ホルモンが不足すると、体が「省エネモード」になるため、さまざまな症状が現れます。主なものは以下の通りです。

  • 倦怠感・疲労:報告では68〜83%の人に出る。
  • 体重増加(主に脂肪もしくはむくみを伴って):報告では24〜59%の人に出る。
  • 記憶力低下・集中力の低下(いわゆる“頭がぼーっとする”感じ): 報告では約45〜48%の人に出る。
  • 月経異常(生理が少ない・多い・不規則になるなど):報告ではおよそ23%の人に出る。

その他、糖尿病の方ではインスリン抵抗性を増強して血糖値が上がりやすくなったり、心不全など心血管系の合併症リスクが高まるという報告もあります。未治療状態では、極めて重篤な「粘液水腫」(=粘液水腫性昏睡)という生命に関わる急変も起こり、死亡率30%に達するとも言われ怖い病気です。

診断方法

診断は主に血液検査によって行われます。具体的には、下記のような検査が標準です。

  • 甲状腺刺激ホルモン(TSH)値:
    通常、甲状腺ホルモンが足りないとTSHが上がります。
  • 遊離甲状腺ホルモン(free T4)値:
    これが低下していれば「明らかな(顕性)甲状腺機能低下症」とされます。レビュー論文では“TSH高値+free T4低値”が典型的な所見とされています。なお、症状がない人(無症状)へのスクリーニング(病気がないか調べる目的の検査)は推奨されておらず、糖尿病(特に1型)や自己免疫疾患を持つ方など「高リスク群」に対してのみ絞って検査を行う考え方が紹介されています。

治療方法

最も基本的な治療は、合成甲状腺ホルモン薬であるレボチロキシン(Levothyroxine)を使って、TSHが正常範囲になるよう調整することです。レビューでは、「第1選択の治療」であると明記されています。

初回投与量は、年齢・心血管疾患の有無・体重・腎・肝機能など個別の事情を鑑みて決める必要があり、高齢者や心疾患のある方では投与量が多くなるとリスクが高いので低めの開始量が推奨されています。治療後は、投与開始または投与量変更後6〜8週間後にTSHをチェックして、その後目標TSH値に落ち着いたら半年から年間1回程度のフォローが適切であると述べられています。

予後

適切に治療された場合、症状の改善や生命予後の改善が期待できます。疲労や体重増加、記憶・集中の低下などが軽減されることが多いです。レビューにも「Levothyroxine によってTSHを正常化し、臨床症状を改善する」との記載があります。

ただし、未治療のままだと前述のように心不全・粘液水腫・妊娠合併症(排卵障害・不妊・流産リスク増)など、重篤なリスクを抱えることがあります。また、治療中でもTSHが過剰に下がって(甲状腺ホルモン過剰な状態)しまうと心房細動や骨量減少などのリスクが出るため、過剰治療・過少治療ともに注意が必要とされています。

投与量が適切なのかは前述の通り、血液検査にてTSHを中心にモニターを行い調節することが望ましいわけです。

最後に

甲状腺機能低下症(特に橋本病が原因となるもの)は「ゆっくり進行する」ため、自分では“何となく調子が悪い”と感じても放置しやすい病気です。しかし、倦怠感・体重増加・記憶の低下・月経異常などが続く場合には、血液検査で確認する価値があります。早期に診断・治療すれば、日常生活の質を取り戻せる可能性が高く、合併症の予防にもつながります。気になる症状がある方、リスクのある方(自己免疫疾患・家族に甲状腺疾患あり・薬剤使用歴ありなど)は、専門医に相談されることをおすすめします。

(本コラムは医学専門職向けではなく一般向けの解説です。実際の治療・診断については、医療機関での診察・検査・判断に基づいてください。)

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