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糖尿病とがんの関係性。GLP-1製剤とメトホルミンでがんが減る!?

はじめに ~糖尿病とがんの関係、そして治療薬の可能性から

2型糖尿病は血糖値が高くなる慢性疾患ですが、単に血糖値をコントロールするだけでは治療は不十分です。特に肥満を伴うことが多く、肥満に関連するさまざまながん(特に肝臓、膵臓、大腸、乳がんなど)のリスクが高いことが分かっています。

これは慢性的な肥満による炎症、インスリン抵抗性、脂肪細胞から分泌されるホルモンの変化などが関与していると考えられています。

一方で、2型糖尿病の治療薬として広く使われているメトホルミンやGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)には、血糖改善以外にも様々な“追加的な健康効果”があるのではないかと注目されています。

過去の研究では、メトホルミンを使う人のがんリスクが低かったという報告や、GLP-1RAが肥満に関連するがんリスクを下げる可能性を示唆するデータもありました。

こうした背景のもと、メトホルミンとGLP-1受容体作動薬を併用した場合に、“肥満に関連するがん”の発生がどうなるかを大規模な実データで分析したのが研究結果が発表されたので本ブログにてご紹介したいと思います。

研究の目的とデザイン

この研究の主な目的は、2型糖尿病の患者さんにおいて、メトホルミンとGLP-1RAの使用が、肥満関連がん(adiposity-related cancer)の発生リスクにどう影響するかを調べることでした。さらに、単独使用の場合と併用(両方使う)場合を比較し、その効果の違いも明らかにしています。

研究は以下のような方法で行われました

  • 世界中の電子カルテ・健康記録データを集めたTriNetX(トライネットエックス)という大規模データベースを利用。
  • 2型糖尿病と診断された患者さんを対象に、以下の3つのグループに分けました:
    1. メトホルミンのみ使用
    2. GLP-1RAのみ使用
    3. メトホルミン+GLP-1RAの併用使用
  • これらのグループと、比較対照としてDPP-4阻害薬(sitagliptinなど)の使用者を参照群として比較。
  • 年齢、性別、肥満の有無、合併症などの背景をそろえるために傾向スコアマッチングという統計的な方法で比較しました。
  • 観察期間は最大で約5年でした。

研究結果:がんと死亡リスクの低下

肥満関連がんの発生率

比較対象として使われたDPP-4阻害薬(例:シタグリプチン)を基準にした場合:

投薬パターン がん発生リスク(HR) 解説
メトホルミン単独 0.96(95%CI 0.92–0.99) 約4%リスク低下
GLP-1RA単独 0.86(95%CI 0.82–0.89) 約14%リスク低下
併用療法 0.61(95%CI 0.57–0.65) 約39%リスク低下

➡️ 併用療法が最も効果的であり、がん発生リスクが大きく低下したことが示されました(約4割減)。

死亡リスク(全死亡)

同じように死亡率についても統計的な解析が行われ、結果は以下の通りでした:

投薬パターン 全死亡リスク(HR)
メトホルミン単独 0.78(約22%減少)
GLP-1RA単独 0.61(約39%減少)
併用療法 0.33(約67%減少)

➡️ 併用療法では全死亡リスクも大幅に低下し、がん関連だけでなく全体の生存にも強い関連が見られました。

どんな人に効果が大きかった?

解析の結果、特に以下の人々でメリットが大きい傾向が見られました:

  • 比較的若い方
  • 男性
  • 肥満を伴う糖尿病の方

これらの層で、併用療法によるがん発生減少や生存率改善の効果がより明らかでした。

なぜ薬ががんリスクに関係するの?

メトホルミンの可能性

メトホルミンは血糖改善だけでなく:

  • AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)経路を介して細胞のエネルギー代謝を改善し、炎症や腫瘍細胞の増殖を抑える可能性が考えられます。
  • 数多くの観察研究で大腸、肝臓、膵臓がんのリスク低下が報告されています。

GLP-1受容体作動薬の可能性

GLP-1RA(例:セマグルチド、デュラグルチドなど)は:

  • 血糖改善とともに体重減少効果があり、肥満に関連する慢性炎症やインスリン抵抗性の改善に貢献します。
  • 一部の観察研究では、複数の肥満関連がんが低下したというデータもあります。

単独でも効果は確認できましたが、同時に使うことでより相乗効果としてより強い予防効果が現れた可能性があります。

まとめ

この研究は、2型糖尿病の患者さんにおいて、メトホルミンとGLP-1受容体作動薬の併用により、肥満関連がんの発生リスクと死亡リスクを大きく下げる可能性を示しました。単独使用でも一定の効果はありましたが、併用療法がもっともがんリスクを抑える傾向が見られました。

以下の点がポイントです

✔ 糖尿病治療薬が“がんリスク低下”に関連する可能性
✔ 肥満や慢性炎症ががんリスクを高めるという背景を踏まえた治療戦略
✔ 単独より併用でより強い関連が示されたこと

ただし、この研究は観察データを用いた後ろ向き解析であり、「絶対にがんを防ぐ」と証明するものではありません。より確実な証拠を得るには、将来的にさらに厳密な臨床試験が必要です。

私見

個人的な考えとして、今回の結果は非常に興味深いと思います。糖尿病の治療薬が、血糖値だけでなく“がんリスク”にも影響するという可能性が示されているからです。とくに、肥満を伴う糖尿病では炎症や代謝異常ががんリスク増加につながることが知られていますし、この研究はその考え方を裏付ける一つのエビデンスになっています。

ただし臨床の現場では、治療方針を決めるために血糖値、心血管病のリスク、体重、生活背景、合併症など多くの要素を考慮して決まります。「がん予防のために薬を変えるべきだ」と単純に言うことは現段階ではまだ時期尚早です。しかし、このような研究が増えることで、将来的にはよりパーソナライズされた治療戦略が確立するかもしれません。

本ブログが皆様の治療の一助になれば幸いです。

にしな内科 院長 

仁科周平

にしな内科

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